じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

12/14@草月ホール 韓国舞踊 舞天


来月12月14日(金)草月ホールにて、昼夜二回公演で韓国舞踊の名手を集めた豪華なプログラム「舞天 祝祭の大地」が開催されます。企画・演出は、「韓国文化の家」の芸術監督としても活躍する陳玉燮(チン・オクスプ)さん。8組の舞踊手による8演目。昨2011年にソウル開催された公演が大きな反響を呼び、日本公演も実現する運びに。これは大変に貴重な公演なので、舞踊全般やアジアの民俗芸能に関心のある方も要チェック。キャッチコピーは、「<舞天> 古代、神に祈りを捧げていた祝祭を公演名とし、踊りの八幕を開く。‘清・壮・激・流・静・重・動・深’、人間の身体で描く絶対の時間だ。」 この言葉の並びだけで、これが日本の伝統とは異なった韓国独自の身体と宇宙の経路を表象した文化であることが分かります。そして舞はもちろん、音(音楽)と色彩もまた、日本的な感性にとっては大変に鮮烈で印象的です。


「舞天(ムチョン;무천)── 祝祭の大地」
日時=2012年12月14日(金)14:30/18:30(二回公演)
会場=草月ホール 〔東京都港区赤坂7-2-21〕
出演=金雲泰「チェサン小鼓舞」/金貞淑「チン舞」/趙寿玉「サルプリ舞」/金順子「太平舞」/李貞姫「トサルプリ舞」/卞仁子・ソンアリ舞踊団「長鼓舞」/李潤石「トッペギ舞」/演戯八山大「パンクッ」
主催=韓国文化財保護財団
後援=韓国文化財庁、駐日韓国大使館韓国文化院、韓国観光公社東京支社
音楽監督=鄭英晩
演奏=柳印相、朴鐘訓、元完哲、尹徐京、鄭翛鎭、徐恩淑、元椰瓊、姜孝周
企画・演出=陳玉燮(韓国文化の家「KOUS」芸術監督)
演出助手=柳贊/舞台監督=朴京辰/照明=李東玹/音響=姜陳錫/写真=李溱桓/デザイン=デザインピル 金貞圭、梁鎭善/翻訳=高年世/製作協力=辛錦玉、蔡孝
入場料=全席自由 前売 5,000円 当日 5,500円
チケット申込み・問い合わせ=「舞天―祝祭の大地―」実行委員会 電話 090-3032-9545(10時から18時)/FAX 03-5920-6099/メール chesuta-leef@joy.ocn.ne.jp


チラシはA4の横開きタイプで、中面の見開きには、出演する8組の舞踊家の写真と、その作品を簡潔な言葉で表現した印象的なコピーが添えられています。


金順子の「太平舞」
踏み立った長短(チャンダン)の急所
歳月がそそがれる深い足跡
生涯の

李貞姫の「トサルプリ舞」
虚空に刻む白色の曼荼羅
想念と沈黙と孤独の結晶
無限の

貞淑「チン舞」
青銅から引き出される蒼の同心円
時間の畝を超えゆく純白のつま先
寂の趣

金雲泰の「チェサン小鼓舞」
流浪のなかで克ちとられた風の回転
とどまることのない宿命の旅人
華麗な

趙寿玉の「サルプリ舞」
放たれるスゴンは白すぎて蒼く
旋律にひたる袖は影さえも白い
浄無垢

卞仁子の「長鼓舞」
一挙手に描いた三月の三日月
一投足に落ちる花びらの波紋
浄の拍

李潤石の「トッペギ舞」
かきならされた田の水平
畦の曲線が流れ込む農夫の体
一代

演戯団八山台の「パンクッ」
風の中で咲いた韓紅の花
疾風の舞法、風林火山
師走の星群


 チラシの裏面には、音楽家たちの紹介文と、ソンアリ舞踊団のメンバーの顔写真、そして演戯団‘八山台’の紹介文が掲載されています。

舞を呼ぶ最高の旋律
 “踊りはひとえに音楽、ただその音楽が身体の芯に至る過程のみである。” というのが演出の至論だ。<舞天>において名舞の選定のみならず重要視したのは音楽及び奏者の選定である。今回、音楽監督に11代を受け継いだ世襲巫家出身で口音の名人鄭英晩(重要無形文化財第82-ラ号南海岸別神クッ芸能保有者)を迎える。テグムの元完哲、アジェンの尹徐京、ピリの鄭翛鎭、へグムの元椰瓊もまた代を継ぐ音楽家門出身である。彼らの<シナウィ>はその真髄を追求する。そして舞踊家に長短(チャンダン)の飛び石を置く打楽には柳印相、朴鐘訓が京畿民謡の姜孝周とともに挑む。踊りを見れば音楽が聴こえ、音楽を聴けば踊りが見える舞台を夢見る。

ソンアリ舞踊団
 柳京華、高賢姫、洪一順(舞踊)/柳絢子(バラ)/関口範章(チン)

演戯団‘八山台’
 「山台(サンデ)」とは王が宗廟から還宮する時や、外国使節を迎える時に開かれた最高の舞台を称したものである。そこにすべてのものを示す八をつけた‘八山台(パルサンデ)[注:「ル」は小文字]’とは、すなわち、いにしえの山台演戯を復元し、歌・舞楽を集結した団体を意味する。また、団員の大部分を女性で構成するこの演戯団‘八山台’は50-70年代に全国を巡回し芸能を広げた最後の旅芸人女性農楽団を復元したものでもある。主要演目である湖南右道農楽“パンクッ”で、道ゆきで育てられた農楽を舞台の美学として昇華する。
 徐恩淑・蠔智元・張保美・鄭善姫・白恩稀・李淞・黃麗娜・朴寶瑟・尹美晶・姜ビョル・崔時榮・柳佳琵・鄭恩恵・李圭鎬・朴根源・朴所願

 最後に、芸術監督を務める陳玉燮(チン・オクスプ)さんの言葉を、これもチラシ裏面の掲載文からご紹介いたします。

八舞の格
 舞踊、それは遠くから翻される旗のようなものだ。夜行列車と深夜バスで韓国各地を巡っていたある日、日本の地における舞踊に関するうわさを耳にした。「男は家族のために働き、女はチマチョゴリをまとい文化を守る。」2010年、東京中野での金順子、卞仁子、趙寿玉との出会いは衝撃であった。空気ににじむ沈黙の動作。舞踊は人生の縮図、暮らしの自叙伝だ。2011年、‘韓日パンクッ’という名で国境を越えて成長した三人の名舞を招請し、ソウルでの舞台を設けた。金順子、卞仁子、趙寿玉、ソンアリ舞踊団、そしてソウルの金雲泰、李貞姫などの名舞が一堂に会したのだ。舞台は縁をつくり、縁はまた違った舞台を夢見させる。2012年、東京での舞台はそこに農業を生業とする李潤石(重要無形文化財第7号固城五広大芸能保有者)、演戯団‘八山合’、そして金貞淑(前:湖南女性農楽団員)が長期にわたる説得の末20年ぶりに舞台に上がる。「清壮激流静重動深」、ちょうど八舞の格の完成だ。
 <舞天>、古代東濊(トンエ)において毎年神に捧げていた祝祭の名である。その名を一里塚とし舞踊の未来を約束する名舞の出会いを記念するとともに古代の祝祭<舞天>のように皆がひとつになる宴を望み──祝祭の大地──と副題をつける。

企画・演出 陳玉燮
この間、人知れず居た名人らを訪ね歩いた。その隠れた名舞を舞台に上げ、<男舞>、<女舞>、<全舞珝舞>を完成させた。歩き訪ねた名人の話を集めた著書『ノルムマチ』はベストセラーとなる。2008年、韓国文化の家【KOUS】芸術監督に着任。<八舞傳>、<八佾>等、伝統芸術の新たな道を開いている。


当ブログ 韓国舞踊関連の過去記事
チャンム・ダンス・カンパニー(2011年12月14日)
金梅子・土取利行、6月に韓国公演(2011年05月29日)

(堀内)