じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

文楽のツボ

こんにちは。
先週、文楽に関してブログを書いたのですが、それから1週間で、すっかり文楽にはまってしまった制作担当うなぎです。
国立小劇場では、5月28日(月)まで5月文楽公演が開催中です。(残念ながらもうすぐ千秋楽ですが…)。

弊財団では、日本と世界の「無形文化」を紹介するフェスティバル、第1回 東京[無形文化]祭(◆)を開催します。「祈る」─宮古島の神歌と古謡、「弔う」―じゃんがら念仏踊り、「囃す」─囃子の競演、「踊る」─舞の競演、「語る」─節の競演など国内5公演、そして「ハイチのカーニバル音楽」、「パキスタンの歌姫サナム・マールヴィ スーフィー・ソングを歌う」、「韓国珍島の死と祝祭」の海外3公演、計8公演が、2012年7月11日〜27日に行われます。是非お越しください。
そして無形文化といえば、日本では「能楽」の次に、そして「歌舞伎」より前に、無形文化遺産として登録されたのが「文楽」です。ウィキペディアによると、「たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化の表現形式であること」と記されていますが、文楽は確かにそうよねぇ…とこの1週間、しきりに感動していました。
そこで先週に引き続き、文楽に関する書籍のご紹介です。

葛西聖司さん著『文楽のツボ』(NHK出版)。文楽の見どころ、聞きどころが、わかりやすく紹介されています。さて、先週ご紹介した入門書(◆)によると…、人形は「主遣い」(首と右手)、「左遣い」(左手)、そして「足遣い」(足)の3人で操っていて、3人で操るようになってから270年が経つのだそうです。足遣いで10年、左遣いで10年の修行が必要だそうです。右手と左手は違う人が操っているので、例えば手を合わせる動作など、息を合わせないと動きが変になってしまうそうです。
また文楽の魅力の一つとしては、近松門左衛門による名作の数々でしょうか。当時(江戸時代)の大阪の地理や、風習、経済などを物語にたくみに取り入れ、人々を惹き付けているのだそうです。「あれ数ふれば暁の 七つの時が六つ鳴りて 残る一つが今生の 鐘の響きの聞き納め 寂滅為楽と響くなり」。これは『曽根崎心中』の一節です。1703年に実際にあった心中事件が題材となっているそうです。物語を語る太夫さんは、床本を置いていらっしゃいますが、実際には見ていたら間に合わないそうなので暗譜、お三味線を演奏される方も暗譜。ということで皆さん全部覚えていらっしゃるということですね。それも、すごいです。
そして、今回文楽公演で上演されている『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)阿古屋琴責の段』では、三味線の方が、琴や胡弓も演奏します。こちらも超絶技巧!?

国立劇場のパンプレットより胡弓を弾く阿古屋…阿古屋は、琴・三味線・胡弓を演奏するという拷問(!?)を受ける。阿古屋の奏でる調べは、乱れがない演奏でなければイケナノデス…よね。
おなじく今回の演目『契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)蝶の道行』はとても華やかで、耳に残る旋律です。舞踊でもよく取り上げられる演目のようです。物語は、この世で添うことができなかった二人が蝶となり、花の野で舞うという悲しいお話のようですが…。
◆『邦楽舞踊シリーズ[義太夫]蝶の道行』

(制作担当:うなぎ)