じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

日本民藝館に行ってきました!

念願の日本民藝館(にほんみんげいかん・東京都目黒区駒場)に行ってまいりました。
日本民藝館は、伝統的工芸品を所蔵及び展示する美術館です。柳宗悦(やなぎむねよし・1889-1961)によって設立されました。柳宗悦は「民芸運動」の提唱者でありまして、『当時の美術界ではほとんど無視されていた日本各地の日常雑器、日用品など、無名の工人による民衆的工芸品の中に真の美を見出し、これを世に広く紹介する活動に尽力した』人物です。(『』内はWikipediaより引用)

工芸品、というと今では何かとても高価なもの、飾るようなもの、というイメージがどこかしらあります。それは、今一番安くて手に入りやすいものが、人件費が安い海外で作られ輸入された物だからだと思います。そうした経済が始まるまでは、地産地消が当たり前で、日本各地で発展した例えば陶器や織物といったものが日用必須の食器・着物として流通していたことでしょう。

一度失われてしまうと戻ることは難しいのが伝統技術です。当時は当たり前だった民衆の工芸は、日常の中でその必要性を失うと共に、作り手も居なくなり、取り戻すことすら難しくなってしまいます。「用の美」という言葉があります。日本民藝館で展示されていた物の中で、例えばテキスタイルであれば、絣であったり、法被であったりととても民衆的。模様も農耕具が模されていたりします。そののどかさに比べ、その繊細な色の組み合わせや細やかな手仕事は、「どれだけ手間が掛かっただろう」と思わざるを得ない精緻な美しさです。
ちょっとおもしろエピソードをネットで見つけました。柳宗悦はそうした工芸に魅了され、収集した工芸品を何処かに展示公開しようと考えていました。そして、帝室博物館(現在の東京国立博物館)に寄贈しようとしたそうですが、博物館側から拒否されたそう。如何に、民衆文化の良さが当時の権威から理解されていなかったか分かりますね。

ちなみに私の行った期間中は、柳宗悦の息子である宗理にまつわる日本・海外の民芸品を集めた特別展「柳宗理の見てきたもの」という特別展が催されていました。所蔵は膨大で、今後も展示内容は変更されるとのこと。何度訪れても、新しい手仕事の品々に出会える美術館です。

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(弘)