じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

宮城道雄先生を知る〜没後60年を迎えて

先日6月25日は、「盲目の天才箏曲家」「現代邦楽の父」と言われ、近代箏曲界のみならず邦楽界全体に革命を起こした大検校・宮城道雄先生の命日でした。かつてはアイドル並みの人気をほこり、雑誌にグラビア写真も掲載されるなど邦楽界だけではなく広く一般の方にも愛された宮城道雄先生。今年は没後60年にあたることから、各所で記念演奏会や行事などが行われていますので、宮城道雄先生を知らない方達が、もう一度知るきっかけになれば良いなと思います。
宮城道雄先生を知るには1962年に出版された吉川英史氏の「宮城道雄伝—この人なり」を読むのが一番ですが、今日はそんな宮城道雄先生の「普段のお姿」が垣間見える本を2冊ご紹介します。

東海道刈谷驛」内田百けん ※けんの字が変換できないため、ひらがな表記

宮城道雄の親友であった小説家・内田百けん氏による短編集です。タイトルからもわかるように、宮城先生がお亡くなりになられた「刈谷駅」での事故について書かれた章があります。他の本と違う所は、宮城先生の死について、死神がむりやり連れて行ってしまったとあり、また死神と宮城先生との駆け引きがとても面白く書かれています。宮城先生が事故に遭われた後、すぐには刈谷には近づけなかった内田氏が、2年の時を経て現場に降り立ちます。そこからの親友である内田氏しか書く事の出来ない文章は、是非ご一読頂きたいです。
※現在この本は販売されていないのですが、こちらの文庫に収録されているようです→「サラサーテの盤—内田百けん集成〈4〉 (ちくま文庫) 」


「語り種〜宮城道雄先生のことなど」藤田節子・久保茂

こちらは本ではなく、会員用の小冊子になりますが、宮城道雄先生の直門であり、宮城道雄の門人の会「宮城会」の古参である藤田節子・久保茂の両氏が、在りし日の宮城先生の思い出を語ったものをまとめたものです。両氏の当時のお稽古風景や当時の様子などが中心に書かれていますが、宮城道雄先生のプライベートなお姿やお言葉などについても書かれています。特に「お箏はね、音が良くなければ駄目だよ。達者に弾いても、音が良くなかったら駄目で、音が綺麗なように弾きなさいね」というお言葉は、とても奥の深い言葉だと思います。そのお言葉をふまえた上で、宮城道雄先生の演奏が収録されているCDを聴くと、なるほど「全身全霊で弾いている」という音がしてゾクゾクします。

この小冊子「語り種〜宮城道雄先生のことなど」ですが、藤田節子氏のご好意で、「我が師である宮城道雄先生を知って頂くきっかけになれば」と、弊財団にいくつか寄贈頂きました。ご希望の方にはお送り致しますので、(1)お送り先住所(2)お名前(3)お電話番号をご記入の上、封書にて下記宛てお申し込み下さい。なお、送料として140円分の切手を同封願います。
※お一人様1部に限らせていただきます。また、なくなり次第締め切りますのでご了承ください。

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