じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「三井家のおひなさま」

今日は、旧正月。お天気に恵まれた散歩日和の今日は心なしか春の気配を感じさせ、梅の花がほころび始めたようです。
さて、さらに春の訪れを告げる「三井家のおひなさま」展(〜4月7日(日)まで開催)へ行って来ました。今回で7回目との事ですが、東日本大震災で中止となって前回展から二年振りの開催。三井家のご婦人やお嬢様たちがこよなく愛して大切にしてきた、ひな人形・ひな道具の華麗なる競演です。お人形もさることながら、ひな道具のミニチュアで繊細な細工に見とれます。

北三井家十代・高棟(たかみね)夫人の苞子(もとこ)(1869〜1946)、十一代・高公(たかきみ)夫人のとし子(としこ、とし=金ヘンに長)(1901〜1976)、高公の一人娘・浅野久子氏(1933生まれ)、伊皿子三井家九代高長(たかひさ)夫人・興子(おきこ)(1900〜1980)旧蔵の贅をつくした逸品。

同時の特別展示は「酒のうつわ」。
展示は、展示室1「館蔵 茶道具の名品」、展示室2「館蔵 茶道具の名品」、展示室3「如庵 茶道具取合せ」、展示室4「三井家のおひなさま」、展示室5「三井家のおひなさま」、展示室6「三井好 都のにしき」、展示室7 特別展示「酒のうつわ」の7つのブースに分かれています。
その中で心惹かれましたのは、とても小さなブース展示室6に6点ほど展示してありました水野年方(1866〜1908)による版画絵でした。三井呉服店の最新モードの図録。明治37年頃の最新ファッションの広告をかねた配りもの(?)だったそうです。こちらの絵は3月12日から別の6点の絵の展示替えがあるようです。
展示室を出てミュージアムショップに立ち寄りましたら、この版画絵の絵はがきがありました。ここで解ったのは、版画絵は1月から12月迄の季節ごとの全12枚だったのだと(^^;

(japogirl)

「観世宗家展」みました

ちょうど一ヶ月前のブログ、「観世宗家展」 - じゃぽブログでご紹介していました「観世宗家展(かんぜそうけてん)」へ行ってきました。松屋銀座8階のイベントスクエアにて21日(月)まで開催、ですのであと三日。行かれるかたはご注意を!

こちらに上掲の写真やご案内が掲載されています→【終了】観阿弥誕生680年 世阿弥誕生650年 風姿花伝 観世宗家展 - 展覧会&ギャラリー | 松屋銀座一般財団法人観世文庫|一般社団法人観世会 公式ウェブサイト| 東京都渋谷区|能楽|公演|稽古

美しい多種多様な能面と装束が数多く展示されており、すぐ目の前にこれらを見ることができるのが魅力です。日本最古の能楽論「風姿花伝」の原本である世阿弥直筆の『花伝第六花修(かでんだいろくかしゅ)』なども出ていたようです(1/7に展示替えあり)。所要時間はゆっくり目で観て1時間前後と思われます。

最終日に合わせるように、1月21日(月)に国立劇場in丸の内vol.8 日本の伝統芸能を知る 「能の世界 その2〜面・装束編〜」が開催されます→MARUNOUCHICAFE.COM – CAFE WORLD。場所は国立劇場ではないので、お間違えなく。アクセス→MARUNOUCHICAFE.COM – CAFE WORLD

読売新聞12/19より→http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news2/20121219-OYT8T00791.htm

(J)

特別展「中国 王朝の至宝」


10/10からスタートしている特別展「中国 王朝の至宝」に伺いました。東京会場は12/24まで、その後神戸会場で来年2/2から開催の予定となっています→http://china-ocho.jp アクセスはこちら→http://china-ocho.jp/access

プレスリリースより→2008年に発見された「阿育王塔(あいくおうとう)」(展示の最後の最後にありました、必ずみて下さいとのこと!)など日本初公開となる最新の発掘成果を含め、国宝級の「一級文物」約60%というスケールで貴重な文物168件をご紹介します。

この日(11/8)はブロガー招待会ということで、学芸員のかたによるギャラリートークが45分ほど、そのあと15分程度でしたが会場内にいるのは少人数でしたので至近距離から展示を眺めることができました。

しかし時間が足りなかった!もう一度じっくりみたいです。こちらのみどころ(http://china-ocho.jp/midokoro)にもありますとおり、同時代に栄えた2つの王朝の文物を対比させた展示となっており、これをすんなり理解しつつみてまわるには、事前に少し中国の歴代王朝について調べてから行けばよかったかなと思いました。同じフロアですが会場は2カ所に分かれていて、それぞれ1時間、合計2時間あるとじっくり拝見できるかもとも。
大きな楽器もありました。最初の写真は「一級文物」の虎座鳳凰架鼓(こざほうおうかこ)です。その次は編鐘(へんしょう)。

関連番組のNHKスペシャル、番組トレイラーを観ることができるサイトはこちら→NHKスペシャル 中国文明の謎
第2集は昨日終了しましたが、第3集の放映は12/16です→NHKスペシャル 中国文明の謎


関連ブログより:
アークヒルズで伶楽舎が敦煌の調べ - じゃぽブログ
「北京故宮博物院200選」と・・・ - じゃぽブログ

(J)

モダン・デザインの父〜ウィリアム・モリス

ウィリアム・モリス展 〜ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン〜」を先日訪れました。場所は兵庫県明石市立文化博物館。11/11まで開催されています。下は博物館の外観ですが、右下の方に明石市立天文科学館が見えます→日本標準時・明石市立天文科学館 - じゃぽブログ

http://www.akashibunpaku.com/access/index.html
http://www.akashibunpaku.com/exhibition/?id=10
次の説明は上掲URLからの引用。

19世紀後半のイギリスで、多彩な才能を発揮させたウィリアム・モリス(1834-1896)。彼は、工芸家、画家、詩人、出版人、そして社会主義思想家として幅広く活躍しました。なかでも、産業革命後の急激な工業化のなか、モリスがデザインした室内装飾は、身近な芸術として市民の生活に受け入れたことで知られ、「モダン・デザインの父」と讃えられます。自然の草花や鳥のモチーフ、流麗な線、美しい色彩、細やかで丁寧に仕上げられた手仕事は、100年以上経った今も愛され続けています。
本展は、フィルムで再現したステンドグラス約20点をはじめ、モリスや彼の仲間たちのデザインによる壁紙、テキスタイルや家具、書籍など、英国の気品あふれる約80点で構成されます。とりわけ、友人の画家バーン=ジョーンズらと手掛けた教会のステンドグラスは、モリス初期の仕事として、あまり紹介されていないめずらしいものです。生活の隅々にひろがるモリスの世界を、ぜひこの機会にお楽しみください。

クラシックの作曲家でいえばブルックナーと同じ年に亡くなっているわけですね。ステンドグラスはよく工夫されて展示されていましたが、やはり現地の教会へ行って鑑賞したいものでした。壁紙ではカラフルなものより二色程度のシンプルなデザインに目を瞠るものがありました。
アーツ・アンド・クラフツ運動の主導者であるウィリアム・モリスは、産業革命の結果、大量生産によって安価だが粗悪な商品であふれている生活環境を嘆き、中世の手仕事に回帰して生活と芸術を一致させようという理想を掲げました。
理想を現実化するために、1861年にモリス・マーシャル・フォークナー商会を創設し「住居・教会・公共建築用の壁面装飾や彫刻、壁面装飾との調和に留意したステンドグラス、宝飾をも含む金工、家具や一切の生活必需品や装飾」といった制作範囲を掲げて様々な装飾制作を意欲的に開始します。
今回の展覧会にはありませんでしたが、「もし私にできるなら "If I can" 」という掛け布の作品では、自ら刺繍を刺してモットーを示したようです。数々の室内用の壁紙の制作にあたっては、あの細かい植物模様が手仕事による木版画ですよ! 機械によるプリントの壁紙模様と違って引き込まれるような味わいがあります。
けれども手仕事にこだわって理想を現実化させるためには、本人には相当な仕事量がかかったはずです。1896年に生涯を閉じたモリスの主治医は、死因を聞かれて、「社会主義の理想を広めようという熱意の犠牲」、別の医師は「病名ウィリアム・モリス、一人で十人分以上の仕事をしたため」と語ったとされています。
当財団のCD『ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声』シリーズ(VZCC-1028〜1041 全14枚) のジャケットは、ウィリアム・モリス1875年の作品である「アカンサス」という壁紙をベースにデザインされています。最新のデジタル技術によって貴重なSP音源の針音ノイズを除去することに成功して蘇った歌声の主達は19世紀末から20世紀前半に活躍した伝説的な歌手達で、ちょうどモリスを始めとしてアーツ・アンド・クラフツ運動が広がっていった頃の時代の歌声ですね。
そろそろ11月、クリスマス用にこちらの作品はいかがでしょうか→じゃぽ音っと作品情報:ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声 1 聖なる響き

全14枚、各盤の曲目も掲載されたホームページへのリンクはこちら→『ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声』シリーズ(VZCC-1028〜1041)
『伝説の歌声』シリーズ完結 - じゃぽブログ


博物館を出るときには綺麗な夕焼け空になっていました。最後にモリスの言葉を。「有用とも美しいとも思えないものを家の中に置いてはいけない。」

(J)

参考文献:『ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』藤田治彦著(東京美術

昭和幻風景ジオラマ展

ちょっぴり落ち込んだ時には、何か癒しを求めたく・・・。
そこで、今ちょうど開催中のNHKドラマ「梅ちゃん先生」のオープニングのジオラマを作った方で有名な『山本高樹 昭和幻風景 ジオラマ展』へ行ってきました。
日本橋高島屋(2012年10月18日(木)→10月30日(火))にて開催されています。


浅草六区の賑わいの素敵なこと。和と洋が入り交じったレトロな街並み。
三社祭の人、人、人。数えると320人居るそうです(笑)説明書きに、正面の鳥居から境内を見てみて下さいと。どれどれ真正面から、上からではなく膝を曲げて目線を下げて見てみると、とてもリアルに体感でき新鮮な感動をおぼえます。
天候の悪かった平日の勤め帰りに寄ったのは結構穴場だったようで、ゆっくりと全部正面から見る事ができました。そして四方八方から眺めながら、のぞきながらがちょっと楽しかったです。会社帰りのサラリーマンの人達も、小さな窓を覗き込んでいました。
展示場内は少し照明を落した感じで、ジオラマからこぼれる灯りが心優しく、ほのぼのとした気持ちになりました。
最後の方に展示してあった熊本人吉のひかり幼稚園(現在は教会だそうです)で、気になった事がひとつ。校庭で先生と生徒が砂場らしき所で、長い棒の先に白いものをつけたものを持ってしゃがんでいて、あれは一体何だったのかなぁ〜?なんて。
最後には、もちろん「梅ちゃん先生」の舞台の蒲田の大きなジオラマがありました。橋の上に梅ちゃん先生

(japogirl)

大英博物館 古代エジプト展へ

先日、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されています「大英博物館 古代エジプト展」へ行ってきました。(2012年9月17日まで開催)
展示会の目玉は、日本で初めて展示の大英博物館が誇る世界最長の37mもありますパピルスの『死者の書』(グリーンフィールド・パピルス)です。約3000年前、ネシタネベトイシェルウという女性神官のために描かれたものだそうです。
死者の書」は、古代エジプトでは、人は死後に冥界の旅を経て来世で復活すると考えられていて、様々な試練が待つ旅路で死者に守護の力を与える呪文集、未来への旅のガイドブックとして、死者に捧げられたものだそうです。他にミイラや棺、護符、装身具など約180点が展示されています。

ミイラが入る棺の中側、そして蓋の裏側もびっしり象形文字が書き埋め尽くされています。棺の頭の部分には頭を守るための呪文が書かれているのだそうです。不思議なのは、男性用と思われる棺に女性のミイラが眠っていた(?)のがあり、未だに解明されていないようです。
今回の展示会では、しみじみと象形文字を見る事が出来ました。文字に鳥の姿が多かった。近くにいた学生さんらしき人の話し声が聞こえて、どうやら象形文字について勉強したようで「象形文字は右から読むとは限らない・・・」と聞こえてきました。そっ、そうなんだぁ〜(笑)
死者の書』の100以上の章のうち、「審判」の場面はオリシス神の前で死者の心臓が天秤にかけられ、反対側に真理の女神マアトが。そして審議にかけられる。釣り合わなければ有罪となり、怪物アメミトに食べられてしまう・・・。
まるで仏教?人間の死後、生前の罪業を閻魔王に裁かれる様?!
有名だと言われる「天と地のはじまり」の絵は、大気の神シュウと湿気の女神テフヌウトから生まれたのが、大地の神ゲブと天の女神ヌウト。シュウが横たわるゲブの前に立ち、ヌウトを両手で持ち上げて引き離したのが、天と地の始まりとされている・・・。
なんとなく「古事記」に相通ずるものありますね(^^)
私が行った時は、まだ夏休みの日曜日だったので人が多かったですが、歴史をひもとく「古代エジプト展」!感動がたくさんありました。

(japogirl)

東と西の出会い バーナード・リーチ展

9月に入って東京にもようやく雨が降り、少ししのぎやすくなりました。いよいよ芸術の秋、気になる演奏会や展覧会が目白押しですが、先日、東京・日本橋高島屋「生誕125年 東と西の出会い バーナード・リーチ展」に行ってきました。

バーナード・リーチの陶芸作品は、以前、東京・駒場日本民藝館で見たことがありましたが、今回は国内の主要美術館や個人が所有する作品約100点が出ているということで、楽しみに出かけました。
イギリス人の作なのにどうしてこんなに懐かしい気分になるのだろうと思っていたのが、今回の展示の解説と会場で上映された紹介ビデオを見て、日本との深いつながりを知り、腑に落ちました。
4歳まで日本ですごしたリーチは、その後イギリスで育ち美術学校で学びますが、ずっと日本にあこがれを抱き続け、ラフカディオ・ハーン小泉八雲)を愛読し、ついに22歳で日本再訪を果たします。やがて民藝運動を指導する柳宗悦と知り合い、日常生活の中で芸術をとらえる視点をもち、しだいに自身が陶芸家の道を志すにいたりました。
日本の陶芸家と交流し、帰国後もたびたび来日して各地の窯を巡るとともに、日本の職人たちに技やデザインを惜しみなく教えたそうです。「東洋と西洋の美の融合」がリーチの目指したところであり、近代日本の陶芸が進むべきひとつの指標になったとのこと。
民藝品の陶器のコーヒーカップなどいまでは珍しくありませんが、日本の窯で日常使いの洋食器を作るというのも、リーチが指導したものだと知りました。リーチの作品は日本風でありながらもどこか西洋のセンスが現れていて、それがいまでも新鮮で、うちにも一つあったらいいなと思ってしまいます。
リーチの作品はなかなか手が出ませんが、高島屋では「用の美とこころ 民藝展」を同時開催していて、家具や食器から日常の小物まで、全国の美しい民藝品を展示販売しています(入場無料)。実演もあって、ぐるっと巡るとこちらも目を楽しませてくれます。

高島屋はリーチとも深いかかわりのある民藝運動に賛同し、民衆の美を発見する民藝品の大博覧会を、昭和9年に東京と大阪で開いたそうです。
70年以上のときを経て再び大規模な民藝展ができるということは、その技術や材料が地域で大切に伝えられてきたということですね。実際に柳宗悦らが足を運んだ工房からの出展もあるそうですし、新しい作家の作品も出ています。全国の美しい民藝品から、お気に入りを見つけてみてはいかがでしょう?
9月10日(月)まで開催しています(最終日は午後6時まで)。
関連リンク
バーナード・リーチの国内盤DVD - じゃぽブログ

(Y)