じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

中山音女CD 4/20発売

じゃぽ音っとブログ2010年10月15日
「情報求む=奄美しまうた・幻のSP盤」

じゃぽ音っとブログ2010年12月29日
「中山音女のSP盤 その後」

昨年10月以来、このブログでも情報を呼びかけさせていただいた中山音女の幻のSP盤について、各方面からご連絡をいただき、どうもありがとうございました。結論としては、残念ながら探していた4枚のSP盤の発見には至りませんでした。かすかな手がかりが見えていたこともあって、結論を年明けまで引き延ばしていたのですが、はっきりとした最終のご報告が遅くなりましたことをお詫びいたします。しかしこの機会を通じて、奄美しまうたの貴重な資料の在り処を知ることができました。今後のCD企画制作にぜひ活かしてまいりたいと思います。本企画に対して、貴重な情報ならびにご関心をお寄せいただきましたすべての皆様に、あらためて御礼申し上げます。

そして本企画は当初の予定通り、昇曙夢コレクションに現存する全14枚分(破損している1枚を除く)のみで、CD化に向けた作業を開始いたしました。詳細情報は以下となります。


奄美しまうたの原点/中山音女 〜幻の名盤復刻〜』
唄:中山 音女(なかやま おとじょ)、三味線:直 伝次郎(すなお でんじろう)
CD2枚組:VZCG-8474〜75
価格4,762円+税
2011年4月20日発売予定

●追記:発売延期のお知らせ
制作進行に遅れが生じたため、本作の発売日を2011年5月11日に延期させていただきます。(2011. 3. 23)

【収録予定曲】※曲順未定
CD 1:
1.あさばな節 2.長あさばな節(上) 3.長あさばな節(下) 4.俊良主節 5.黒だんど節 6.諸鈍長浜節 7.芦花部一部 8.伊津部立神 9.くんにょり米女節 10.曲りょ高峠節 11.まんこい節 12.うけくま饅女節 13.かんてぃむぃ節 14.浦富節

CD 2:
1.やちゃ坊 2.でんなご節 3.塩道長浜節 4.しゅんかね節 5.側屋戸湯湾節 6.千本節 7.飯米取り節 8.いきょより節 9.嘉徳なべ加那節 10.太陽ぬ落てぃまぐれ節 11.ちきゃげ節 12.うんない節 13.天草踊り節 14.薩摩踊り節(六調)


中山音女の若き日の歌声は、奄美出身のロシア文学者・昇 曙夢(のぼり・しょむ)氏が著書『大奄美史』(昭和24年刊行)の中で、「アジア文化の交差点としての奄美が見える唄声!」と大絶賛したことで一躍評判になりましたが、その声は、昭和初期に私家版としてわずかに製造された全18枚のSP盤に記録されたにすぎませんでした。
『大奄美史』を愛読した研究者たちの間でも、また晩年の中山音女を知る人たちからも、その若き日の歌声は幻と言われ、惜しまれ続けていました。
ところが、こよなく郷土を愛した昇氏の遺品・SP盤コレクションの中に、14枚もの再生可能なSP盤があることがわかり、今回のCD復刻に至りました。
CD復刻にあたり、欠損したSP盤を探すべく広くよびかけましたが、残念ながらこれ以上は発見することができませんでした。現時点で、もっとも貴重な音源の復刻です。

【解説書内容】
巻頭言:三隅治雄(芸能学会会長)
歌詞および解説:豊島澄雄(奄美しまうた研究家)
※しまうたの背景となる奄美大島の歴史、中山音女のことをはじめ、各曲ごとに歌詞や解説等が見やすくわかりやすく掲載予定。

中山音女(なかやま・おとじょ):略歴
明治24(1891)年〜昭和45(1970)年。鹿児島県大島郡宇検村湯湾生まれ。幼いころから歌が上手で、大人たちを驚かせたと伝えられる。同郷で理髪業を営む中山安元と結婚。家庭人となってから、いよいよ“うたしゃ”としての名声が広がり、昭和初期(3年頃?)に、三味線の直伝次郎(すなお・でんじろう)と共に、山キ商店が委託製造したSP盤(トンボ印ニッポンレコード)にその歌声の記録を残している。以後、奄美本島以外に徳之島、喜界島、沖永良部島与論島などにも出かけて活動。昭和30年代には往年の名人と称せられる演者と共に民謡大会などにも参加し好評を博した。

昇 曙夢(のぼり・しょむ):略歴
明治11(1878)年〜昭和33(1958)年。鹿児島県大島郡実久生まれ。明治・大正・昭和期のロシア文学者であると同時に、奄美諸島返還の尽力者。自らの出身地・奄美大島をこよなく愛し、その歴史と民俗誌を大きな世界観でとらえた『大奄美史』を昭和24(1949)年奄美社から刊行。昭和30(1955)年には、研究者としてまとめた『ロシヤ・ソヴェト文學史』で、第12回日本芸術院賞ならびに第7回読売文学賞を受賞している。

(堀内)