じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「奄美・琉球」が世界自然遺産リストヘ

国道58号は、鹿児島県鹿児島市から、奄美大島を通り沖縄県那覇市まで延びる海上南北600キロ以上の、日本一長い一般国道です。その国道58号を巡りながら、南国特有の様々な自然や文化、人々、さらには希少な動物との出会いを伝えるテレビ番組が先日放映されました。
とても美しく、そして力強い島々の風景が、番組を観終わった今でも、深く心に刻まれています。そんな思いを抱いている中、昨日、「奄美琉球」が世界遺産リストへ、という個人的にも嬉しいニュースを目に致しました。
政府は1月31日、世界遺産登録を目指す国内の資産を示した暫定リストに、自然遺産として「奄美琉球」(鹿児島、沖縄両県)を記載することを決定。今後、政府は、日本が登録を目指していることを示す「暫定リスト」を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出するとともに、推薦する地域を特定するための専門的な調査などを行ったうえで、改めてユネスコに正式な推薦書を提出する方針、という内容です。
琉球諸島 マングローブ
アマミノクロウサギヤンバルクイナなど、希少種、固有種の動植物が生息することで知られる鹿児島県・奄美群島沖縄県琉球諸島。世界の亜熱帯地域は、草原、砂漠が多いですが、雨の多い奄美大島、徳之島には、世界的にも例を見ない常緑広葉樹林がまとまって存在しており、そういった環境の中で、大陸と地続きだった時代の陸生生物が生き残って独自の進化を遂げていることや、絶滅の恐れの高い多くの希少種が生息していることなどが、選定基準を満たすと判断された、とのことです。
現在の日本の世界自然遺産は、屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島の4地域。「奄美琉球」地域にはまだまだ課題も多く残る状況で、ユネスコへの推薦までには1年以上かかり、登録の可否の決定も早くて2016年になるということですが、是非とも5番目の世界自然遺産認定を願うばかりです。
そんな話題が巷をにぎわせている中、弊財団でも奄美琉球に関する作品を数多く発売しています。本日は「中山音女」「武下和平」の奄美関連2作品をご紹介したいと思います。
まずは、平成23年度文化庁芸術祭レコード部門 優秀賞受賞作品「奄美しまうたの原点/中山音女〜幻の名盤復刻〜」。

アジア文化の交差点としての奄美が見える」と絶賛された伝説の唄者、中山音女の若き日のうたごえが甦ったCD作品。このCDについては、稀少なSP盤の復刻ということで、企画の段階からこのブログ上で何度も紹介し、多くの方々の支援のおかげで完成した作品です。
<受賞決定時のブログ> → ◆「奄美しまうたの原点」が芸術祭優秀賞に
そして、「奄美しまうたの神髄/武下和平 東節の心」。

しまうたの唱法で、最も注目されるのは裏声を多用することです。低い音域の声から高い音域へと次第に歌い移っていくと、ある高さのところで裏声となり、これを極めて自然に行うのがしまうた。このことによって音域は大きく広がり、表現力がそれだけ増すことになるわけです。この裏声の活用は、琉球民謡には見られず、日本本土の民謡でも例が極めて少ないと言われています。そんな奄美しまうたで“百年に一人しか出ない唄者”と名声を集めているのが、武下和平。この作品は、満場の観衆を前に行われた東京公演、その渾身の舞台を余すことなく収録したライブ録音盤です。
今年の夏は、久々に奄美大島を訪ねてみたいと思う今日この頃です。

(よっしゃん)