じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「邦楽解体新書」

8月20日(土)と21日(日)の2日間、東京、両国の江戸東京博物館ホールで邦楽ウィークエンドという催しがありました。1日目は「歌舞伎尽くし」、2日目は「三味線・箏尽くし」。
2日目の「三味線・箏尽くし」に行ってきました。開演の20分ほど前に着くと、ロビーの体験コーナーからお箏や三味線の音がにぎやかに聞こえてきます。立派な飾りが施された箏や、ほっそりした棹の江戸時代の三味線の展示を興味深げに眺めている人も。
第一部「三味線・箏 大解剖!」の幕が開くと、舞台の上には職人さんがずらり並んで仕事中。東京邦楽器商工業協同組合の、ホンモノの三味線の職人さんたちです。
1.木取り、2.棹まるめ、3.棹磨(みがき)、4.仕込、5.皮の張替と並んでいて、製作の様子が順を追って説明されます。
三味線の棹の材料は紅木(こうき)という固くて重い木材(水に沈むそうです)。砥石を使って鏡のようになるまで磨きあげます。実演していた向山さんは3日間磨き続けるとか。たしかにいい三味線は棹も胴もツヤがあって見た目にも美しいですよね。棹を胴に仕込むには接着剤を使わないので、一厘単位(1厘は約0.3ミリ!)で調整してぴったり合わせるというお話も印象に残りました。
       
写真は、以前ある楽器店さんで皮の張り替えの様子を見せていただいたときのものです。ものすごい力で引っ張っています。
つぎに、箏の職人さんたちが登場して工程を見せてくれました。1.丸太墨掛け、甲造り、2.飾り付け、角仕込、3.猫足造り、4.糸締めの順です。
箏の製作には10日から15日ほどかかるそうですが、その前に材木をとってから数年かけて乾燥させ、くるいが生じないようにするとのこと。一面完成するまでに相当な手間と時間がかかっていることがわかります。
箏の内側に細かい綾杉模様を彫る工程もありました。楽器ができあがると裏板で覆われてほとんど見えない部分ですが、音色をよくするためにかかせないものということ。
そして休憩の前に、なぜか抽選会が! 箏1面と三味線2挺が、東京邦楽器商工業協同組合から来場者にプレゼントされたのです。受付のところでもらった番号札を見つめながら、「欲しい! でも当たったらどうしよう? 持って帰るにも今日は雨だし・・・」とドキドキしながら発表を待ちましたが、その心配は無用でした・・・。
東京邦楽器商工業協同組合では、毎年この種の催しを開いて、楽器をプレゼントしているそうです。来年もトライしてみようかと。

第二部は、箏と三味線の演奏会。なかでも義太夫三味線は女流義太夫の皆さんによる珍しい「曲弾き」(曲芸の「曲」ですね)。三味線を逆さにしたり頭上に掲げたり、バチを放り投げてキャッチしたり棹の部分で弾いたりと、荒唐無稽な演奏スタイルに客席が沸きました。ロックミュージシャンのアクロバティックなギターよりずっと前から、こんなことを楽しんでいたのですね。もちろん、相撲の櫓太鼓を模した三味線の乾いた音色もすてきな響きでした。

第二部のプログラムはつぎのとおり。三味線の今藤長龍郎さん、箏の岡村慎太郎さんは、第一部でも演奏家の立場から楽器の説明と短い演奏をされました。

第二部 名曲アラカルト
箏曲
 「乱」
 「瀬音」(宮城道雄 作曲)
   箏:岡村慎太郎 十七弦:澤村祐司
◆二十五弦箏
 「ふるさと」(岡野貞一 作曲、小宮瑞代 編曲)
 「潮風に吹かれて」(石井由希子 作曲)
   二十五弦箏:小宮瑞代
義太夫三味線
 「関取千両幟」より〈櫓太鼓曲弾き〉
   三味線:鶴澤三寿々・鶴澤津賀榮・鶴澤賀寿・鶴澤津賀花
長唄  「吉原雀」
   唄:芳村金四郎・芳村辰三郎・日吉小八郎
   三味線:今藤長龍郎・今藤長市郎・杵屋勝十朗

(Y)