じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

上野の奏楽堂

先日18日のブログで、安藤政輝師の退任記念演奏会の様子がアップされました。(→◆

普段では、なかなか演奏されない箏独奏とオーケストラのための「壱越調箏協奏曲」や、そのオーケストラを指揮されていた澤和樹師が、アンコールでヴァイオリンを手に取り演奏された「春の海」も聴き入ってしまいました。

受験シーズンも終わった3月の後半に、東京藝術大学の校内にある奏楽堂で、退官される教授による記念演奏会が開催されているようです。今年はもう終わってしまいましたが、3月16日〜22日の間に6人の教授による演奏会がありました。申込み制ですが入場料も無料ですし、来年も要チェックというところですね。

奏楽堂は東京藝術大学音楽学部にあるコンサートホールですが、現在校内敷地にあるものが「新奏楽堂」、上野の公園内にあるのが「旧奏楽堂(旧東京音楽学校奏楽堂)」です。旧奏楽堂は、明治23年(1890)に、日本で初めての音楽専用ホールとして建立されたそうです。当初は東京音楽学校(現東京藝術大学音楽学部)の校内にあって、昭和62年に現在の場所に移動され、重要文化財に指定されています。

明治期の文部技官で学校建築の功労者である、山口半六(1858-1900)と久留正道(1855-1914)が設計したこの旧奏楽堂で、滝廉太郎がピアノを弾き、山田耕筰が歌曲を歌い、三浦環がオペラデビューを果たしたということです。藝大をだいぶ前に卒業された方にお話しを伺うと、「この建物は学校の敷地のあの辺りにあって、そこで卒業の演奏会をしたのよ。緊張したわ〜」と懐かしそうにお話しされていました。

旧奏楽堂を移築するときに解体工事があって、ホールの床や壁、天井から、稲わらやおがくずが大量に出てきたそうです。明治の音響学者、上原六四郎が助言した防音の工夫とのことです。またカマボコ状の天井空間もしっくいの壁面とあいまって音響効果を上げているとのとで、詳細は旧奏楽堂に行くと展示室があり、いろいろ見ることができます(公開日はお調べください)。

ホールにあるパイプオルガンは、公爵徳川頼貞大正9年(1920)に寄贈したという世界でも珍しいふいごで風を送る空気アクションのオルガンとのことです。こちらをご覧になりたい方は、毎週日曜と木曜に学生によるコンサートが開催されていますのでいかがでしょうか。入場料500円とのことです。平成25年には建物点検があるようですので、訪れるなら今年でしょうか。

また、旧奏楽堂では、毎年5月に「奏楽堂日本歌曲コンクール」が開催されています。歌唱部門入賞者には、日本歌曲の振興に尽力され、東京音楽学校でも教鞭をとられた故・木下保(1903〜1982)氏の遺志による「木下記念賞」が贈られています。弊財団よりリリースいたしました『木下保の藝術〜信時潔、團伊玖磨歌曲集』には、木下先生が奏楽堂とご縁があることから、CD解説書の裏表紙に、台東区芸術文化振興財団様のご承諾をいただき「旧東京音楽学校奏楽堂立面図」をデザインさせていただきました。設計関係の方もおすすめ!?のCDとなっております。本物は、是非足をお運びいただき、こ覧いただければと思います。

話を戻しまして、、、安藤政輝師による宮城道雄曲作品集第2弾!『安藤政輝 宮城道雄を弾く2 〜箏独奏曲全集〜』
はこちらです。宮城道雄の箏独奏曲を集約した1枚です。

また「春の海」の演奏にチャレンジされたい方はこちら!
『名手と共演 「春の海」カラオケ』
安藤政輝(箏)、山本邦山(尺八)両師による模範演奏のほかに、箏パート、尺八パートがそれぞれ分かれて収録されているトラックもありますので、練習にもご使用いただけます。

(制作担当:うなぎ)