じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

東京[無形文化]祭より「囃す」―囃子の競演

ほど近いところに自分が住んでいるということもあり、最近お参りに訪れた神社をご紹介します。

鷲宮神社(埼玉県久喜市http://www.washinomiyajinja.or.jp/
東京の中心からだいたい40キロ(尺貫法で約10里)圏に位置し、ここが江戸里神楽の源流とされているところ。300年ほど前にあたる17世紀後半、ここから江戸へ伝わったそうです。現在は東京から私鉄の特急を使えば1時間あまりの距離ですが、ここでは今でも催馬楽神楽が行なわれています(詳しくはこちら)。今日はそういったルーツを持つ江戸里神楽を演目に含む、あさって7月23日(月)19:00紀尾井ホールにて開演の「囃す」―囃子の競演公演についてです。

「囃す」あるいは「囃子」というのは、日本人には普段馴染みの深い言葉ですが、江戸里神楽、民謡囃子、邦楽囃子、能楽囃子と「囃す」をテーマに日本の芸能の種目が一堂に集まって行なわれる公演というのは、自分は正直今まで聞いたことがありません。普段はそれぞれの舞台の引き立て役といえばいいのでしょうか、表舞台で独立してその芸を披露するというケースはほぼ皆無。かつて情報や物の流通が容易ではない時代のなか、さまざまな種目が存在しながら今に至っているため、かえってそれぞれの種目で「囃子」は独自の進化を遂げた持ち味が存在し、同じ打楽器でありながらも使われる楽器や、その間合いはもちろん、聴こえてくる音はさまざま。
現在よく耳にするポピュラー/ジャズ系のドラムやパーカッションでは、ひとりの奏者にその役割が委ねられることが多く、その奏者個人の技量でさまざまな太鼓や鳴り物をいかに響かせるかがポイントのひとつかと思います。この公演では、打楽器オーケストラともいえる複数の奏者ならではの、囃子の豊かな響きや間合いが一度に楽しめるというのが見どころなのではないでしょうか。
詳しくは公演プログラムに掲載されている演目解説をお読みいただきつつ、ご覧いただけたらと思います。最後に、この第一回東京[無形文化]祭Webサイト「囃す」―囃子の競演のページにアップされている制作発表会のYoutube動画からのお話を。今回の邦楽囃子でご出演される藤舎呂英さんのグループ名「Roei―√xTo」について、その一見したところ読めない記号がありますが、これは囃子の「手」の記号を表したものだとのこと。無形文化として長く受け継がれ、日本の芸能を音で支えてきた「囃子」の豊かな世界が味わえる素晴らしいテーマだと思います。お見逃しなく!

(じゃぽ音っと編集部T)