じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

徳川美術展 尾張徳川家の至宝

昨年のある秋の日、所用で東京藝術大学にお伺いした帰りに、普段は上野公園を通ってJR上野駅に出るのに、その日は時間があったので、日暮里まで歩いてみようと思い、いつもと反対の方向に歩きだしました。途中で谷中霊園の前を通ったのですが、「徳川慶喜公のお墓→」というような案内が多分あったと思うのですが、それに誘われて、ふらふらと霊園の中に入っていきました。
ところが慶喜公の墓所が見つからず迷子になってしまい、気付いたら夕暮れ時で日も落ちてきて、さきほどすれちがった犬の散歩のおじさん以外、他に誰もいなかったので、これはまずい…と思い、出口に向かおうとしたのですが見つからず、とにかく端の方へと思って走ると壁!?日暮里の方向に出たかったので、こっちだ!と思った方へダッシュすると、やっと通りに出られたのですが、そこが何処かわからず進んでいると、突然歩道がなくなり、高速道路みたいな道に合流してしまいました。ここを歩けと?
どちらかというと霊園で迷ったことより、歩道が突然なくなったことにビックリしたのですが、見渡すと隠し階段?があり、そこを降りると鶯谷の駅裏側でした。しかもちょっと微妙な雰囲気で(笑)。自分でも「何してんねん!」とつっこみたくなりましたが、その日から徳川家と伝統芸能の関係を考える日々となりました。
その後すぐに出合ったのが、こちらのNHK大河ドラマのDVD。『葵 徳川三代』

以前ブログを書いた日(◆)から、ただいまも鑑賞中。「今宵も、おなじみの顔でござる」と、ドラマが始まる前に中村梅雀さん演じる水戸光圀が、人間関係や時代背景などを説明してくれるので、歴史苦手の私もすっかりはまっています。そして今日はしっかりこちらへ。

江戸東京博物館開館20周年記念特別展「徳川美術館展 尾張徳川家の至宝」(公式サイト)。国宝「源氏物語絵巻」や、国宝「初音の調度」など、御三家筆頭の尾張徳川家に受け継がれてきた什宝の数々の展示です。
徳川家康公や秀忠公の直筆の書や、名物刀剣の数々、そして尾張徳川家の祖、徳川義直公が着用した具足などなど…。そして目を引いたのは、やはり能面、能装束、扇や帯、そして能管、鼓などの能道具。室町時代に完成された能は、江戸時代に入ると武家の式楽として定められ、慶事や公式行事で必ず演じられたそうです。
そして箏も展示されていました。

こちらは図録ですが(公式サイトには写真掲載)、箏は義直公の正室春姫が所用していたもので、室町時代の楽器だそうです。やや小ぶりでしたが演奏しやすそうでした。甲や磯の部分に寄木細工や象嵌の技法を駆使して、扇の模様がたくさん装飾されて綺麗でした。一緒に楽譜(17世紀のもの)も展示してあり、いまの表記法とあまり変わりありませんので読めそうでした!余談ですが、箏の糸がきれいに張ってあったので、きっと締め直されたと思うのですが、作業にあたられた楽器屋さんは緊張されたのでは…と勝手に想像しておりました。
徳川家康が1600年(慶長5年)に関ヶ原の戦いに勝利してから、元禄時代(〜1704年)までの約100年くらいの期間が興味深いです。歌舞伎の発祥とされている、出雲のお国による「かぶき歌踊り」興業は1603年(慶長8年)。近世箏曲の開祖八橋検校は、1614年(慶長19年)に誕生。『糸竹初心集』(箏・三味線・尺八の入門書で最古)は、1664年(寛文4年)出版。当時どんな事が起こっていたのか、タイムマシンに乗って様子を覗きに行きたいです。

(制作担当:うなぎ)