じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

奇跡の村、長野県川上村

猛暑の8月末に少し涼しげで、ポジティブな話題を・・・。人口減の日本で、農業の担い手は少なくなるばかり。地方では老齢者の割合が増えるばかりです。ところが、高原野菜の有名な生産地である長野県南佐久郡川上村では、出生率1.83(全国平均は1.41/2012年)。人口5,000人足らずの村における1世帯当たりの年収は2,500万円。年収から実際は設備投資やさまざまな費用が差し引かれると思われますが、それでも何ともうらやましい数字。出生率の高さは、世帯の豊かさに起因することは確かでしょう。

(詳しいお話しは、川上村村長藤原忠彦氏の本に書いてありますのでご参考まで)

こちらの本、わたくしも読んだのですが、高年収の理由は高冷地であることを逆手にとって推進したレタス栽培に集約されるようだと理解しました。寒冷地であるということは、他の大多数の農地が温暖な時期に、希少な寒冷地向きの野菜が取れるということ。希少であれば当然、1個当たりは高く売れます。

加えて、生産の効率化にとても大切な農業情報や高度な気象情報、そして高く売るための市況情報をリアルタイムに村民に提供する「農業情報ネットワーク システム」を村で構築してしまったそうで、村長のダイナミックな手腕に感心してしまいます。川上村では夏に集中して高原野菜で稼ぎ、冬は休むとか。夏の忙しさは半端でないようですが(午前零時から起きだして働くもよう)、そんなメリハリのある1年もわたしには羨ましく聞こえてしまうことしきり・・・。

(村では毎年8月に花火大会も催されるそう)

奇跡の村のすごさはまだ終わりません。24時間の村立図書館もあります。夜は無人ですが、自動貸し出しマシンから、本やビデオをかりることができます。約7割を農業関係者が占める川上村では、夏場は農作業に追われます。日中は図書館を利用しづらいため、1995年の開館に当たり、午後5時の閉館後も蔵書の約7分の1を24時間借りられるようにしたとか。ちなみに、開架書架36,000冊、閉架書架14,000冊、CD2,250枚、VHS1,100本、CD550枚とのこと。(川上村図書館

そして個人的にとっても行ってみたい場所があります。村立の中学校に作られた音楽堂です。ドイツから輸入した小さなパイプオルガンが正面に設置されたチャペル風の音楽堂になっていて、結婚式場として使えるように設計されています。この中学を出た卒業生たちが、いつかまた村に戻ってきてこの音楽堂で結婚式をあげてくれたらという発想に基づいているそうで、おもしろいですね。当然、音楽コンサートにも利用できます。



株式会社エーシーエ設計HPより)
この音楽堂、そして実は中学校の校舎すべてが、村のカラ松材をつかって建築された、温かみのある木造建築。私どもの財団では、日本の伝統音楽を日本各地のホールで公演して頂くための活動もしています。また、学校教育において日本の伝統音楽を普及振興する活動もしています。いつの日か、近いうちに、この美しい川上村の中学校・音楽堂で、コンサートを開催できたら素敵です。

(弘)