じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

宮薗節を知る会

宮薗節(みやぞのぶし)を聴いたことがありますか? 〜節といっても民謡ではありません。江戸時代に生まれた三味線音楽、浄瑠璃(語りもの)の一つです。創始者宮薗鸞鳳軒(らんぽうけん)という人にちなんで宮薗節というのだそうです。
邦楽のジャンルとしては、同じ江戸時代からの三味線音楽である、河東節(かとうぶし)、一中節(いっちゅうぶし)、荻江節(おぎえぶし)と合わせて「古曲」とよばれています。昭和40年代までは放送、レコード発売、演奏会なども多く、なかなか盛んだったとか。
永井荷風も気に入っていたようで、『雨蕭蕭(あめしょうしょう)』という短編のなかで宮薗節を、「諸流のなかでもっともしめやか」「夢の中で浮世絵美人のささやきをきくようだ」と表現しています(この作品では、宮薗節の古い言い方「薗八節」となっています)。
昨今は演奏会も少なくなり、邦楽に関心があっても聴いたことがない方のほうが多いかもしれませんね。
財団法人古曲会は、やさしい解説と名演奏によって古曲を知り、楽しむ、『古曲を知る会』というシリーズを毎年企画しています。その一つ「宮薗節を知る会」が、12月15日(水)に紀尾井小ホール(東京 四谷)であります(午後2時開演)。曲の前にていねいな解説がありますので、初めての方にもおすすめです。

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初めて私が宮薗節を聴いたのもこの会でした。何度か伺ううち、女性の声で波に揺られるような歌語りと、つかずはなれずの控えめな三味線が心地よく感じられるようになりました。
古曲を知る会』は年4回で、「荻江節を知る会」「一中節を知る会」「宮薗節を知る会」「河東節を知る会」があります。平成15年度から平成17年度までのこのシリーズのライブ録音盤「古曲の今」(CD12枚組)が当財団から出ています。

その続編として、平成18年度から21年度までの4年間のライブ録音から抜粋した36曲を収めた『古曲の今 第二集』(CD10枚組、18,000円+税)が、12月15日に発売されます。宮薗節は6曲入っています。
第二集の解説書に掲載するために、演奏された人間国宝の方々にお話を伺うことができました。宮薗節の人間国宝は宮薗千碌(せんろく)さんです。
「宮薗節は悲恋もの、悲しい物語ばかりで、ハッピーエンドは一曲しかありません」とのこと。そういえば以前、この会で「鳥辺山(とりべやま)」が演奏されたとき、ハンカチで目頭を押さえている女性がいました。今度の会では千碌さんの「鳥辺山」を聴くことができます。
やわらかな、揺れるような宮薗節の曲調について千碌さんは、「客席で子守歌にされる方もいるようですよ」と苦笑していらっしゃいました。
12月15日の会では、出来たての『古曲の今 第二集』もご披露できそうです。浮世絵美人のささやきがきこえてくるのか、はたまた気持ちのよい子守歌になるのか、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

(Y)