じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

落語の世界は深い!part3

立川談志師匠が亡くなって、早くも1年が過ぎました。そして、一周忌に合わせ、「映画 立川談志」が全国16館で公開中。落語「やかん」「芝浜」をメインに、未公開のプライベート映像を盛り込んだドキュメンタリー作品として、スクリーンに談志師匠が蘇ってきます。と言いつつ、私はまだ観ていませんので、今週末映画館に足を運んで、談志ワールドを堪能してこようと思っています。
◆映画公式サイトはこちら
というわけで、本日のブログの話題は「落語」です。先日、「“旅”に関する落語のCDってありますか?」というお問い合わせを受け、早速、弊財団商品を検索。「どんな噺家さんの、どんな演目があるのだろう?」と探すと、いろいろとあるんですね。主な作品を紹介したいと思います。
まずは、五代目 柳家小さん師匠の「二人旅」。旅を扱った落語は数多いですが、その中でも、特に小さん師匠の全篇にゆったりとしたムードが漂っていて、いかにも昔の旅らしい素朴な雰囲気を満喫させてくれる演目。そそっかしい江戸っ子二人組と、のんびりした茶店の老婆の会話の妙が聞きどころのひとつです。落語家として、初の人間国宝となった小さん師匠の芸が、ジワジワっと染み込んできます。
<五代目 柳家小さん十八番集(7枚組)>








続いて、六代目 三遊亭圓生師匠の「三人旅」。東京の代表的な旅の噺で、上方には「東の旅」という長いシリーズがありますが、それに匹敵するもの。ただ、圓生師匠の「三人旅」は、オーソドックスな内容にはほとんど当てはまらず、小さん師匠の上記演目とはまるで別の噺のように違うのです。舞台は一般的な東海道ではなく、中仙道。幅広いレパートリーときめの細かい芸、そして三遊派本来の本格的な芸の継承者であった六代目 圓生師匠の独特の噺が楽しめる内容です。
<ビクター落語 六代目 三遊亭圓生(5)三人旅/小言幸兵衛/洒落小町>







そして、「三人旅」は、他にも三代目 三遊亭金馬師匠が演じています。
<ビクター落語 三代目 三遊亭金馬(3)池田大助/三人旅/くしゃみ講釈>







江戸時代に十返舎一九が書いた「東海道中膝栗毛」という、東海道を弥次郎兵衛と喜多八の二人が、厄落としにお伊勢参りを思い立ち、東海道を江戸から伊勢神宮へ、さらに京都、大坂へと旅する様子を当時の口語で描いた滑稽本。「旅の落語」噺は、それになぞらえて作ったと言われていますので、昔は東海道のかなりの部分の話があったと思われます。それが、時代とともにやる場所が限られてきて、現在聞けるのは、江戸を出立する「発端」と小田原付近の「鶴屋善兵衛」「おしくら」くらいになったそうです。やる場所が限られてくると、同じところをやっても演者によって、やり方も変わってきます。上記六代目 三遊亭圓生師匠のように、「おしくら」を東海道ではなく中仙道でやる噺家さんもいます。
噺家さん」「演目」のしばりで検索することはあっても、今回のように、「あるテーマやモチーフ」で落語を楽しんでみるのもおもしろいですね。個性あふれる名人芸の数々を比較しながら聞いてみる。次回は、また違うキーワードでいろいろな噺を紹介したいと思います。それでは。。。
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(よっしゃん)