じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

落語の世界は深い! part12

季節はいよいよ「春」。卒業シーズンが終われば、次にやってくるのが、入学式シーズン。新たな出会いが生まれる季節です。そして、「春」といえば「さくら」。本日のブログでは、そんな「桜」に関わる落語作品をご紹介したいと思います。
まずは、「長屋の花見」。弊財団からは、五代目 柳家小さん師匠の作品から。
◆ 五代目 柳家小さん十八番集 (7枚組)
“長屋もの”の代表的な傑作。大家さんの号令一下、長屋の面々が半強制的に花見にかりだされる。それでも酒が飲めると思ったのもつかの間。大家から出された酒の中身が、番茶だとわかって一同は失望落胆。さらには「景気よく酔っ払え」と命令される始末。長屋の連中は果たしてどうなることやら。。。
東京では、四代目小さんの十八番として知られ、それが五代目小さんに引き継がれた。花見というからには当然春の落語で、そこで毎年、花が散るころに喋り慣れて最高の調子が出るそうだが、この作品の吹き込みは秋も深まった頃に行われた模様。何度かやり直したあげく本番を録り終えて、まずまずの出来と思われたのだが、小さん自身の申し出で、日を改めて吹き込みし直した、ということ。“感情移入”が噺全体に満ち満ちている作品です。
続いてのご紹介は、「貧乏花見」。弊財団からは、六代目笑福亭松鶴師匠の作品から。
◆ ビクター落語 上方篇 六代目 笑福亭松鶴(5) 貧乏花見/胴切り
東京の「長屋の花見」では、大家の命令の下に長屋の衆が花見に出かけるのに対し、上方では明け方の雨で仕事に出そびれてしまった人たちが、雨が上がったので自発的に出かけようとするところに、気質の違いがあるとよく言われています。
松鶴の落語を聞いていると、登場人物が実に生き生きと動き回っていることを強く感じることができます。テクニックで持っていかずに、登場人物の気持ちを前面に出して、粗筋だけを頭に入れ、その場で会話を作りながら運んでいくような演じ方であったとのこと。
豪放磊落、戦後上方落語界隆盛の立役者である、六代目松鶴の全盛期のライブを楽しむことができます。
そして、最後のご紹介は、「花見の仇討」。弊財団からは、三代目三遊亭金馬師匠の作品から。
◆ ビクター落語 三代目 三遊亭金馬(6) 花見の仇討/寝床/やかん
世間をあっと言わせたいと、花見の嗜好で仇討ちの芝居をやって受けようじゃねえか、と話し合った江戸っ子四人組。「やるのなら、やはり仇討ちだ。江戸中で噂になるぜ」と茶番を計画。翌日、打合せ通りに芝居を演じていたが、肝心の仲裁役の六さんの姿が見えません。困った3人の中に、偶然出会った武士が入ってきて。。。
もとは「八笑人」という題が使われていました。江戸時代の1820(文政3)年に出た、滝亭鯉丈の「花暦八笑人」初編の一、二に載っている話を、落語化したものだからです。原作は、最後にサゲがないだけで、筋はほとんど現行と同じです。
金馬の芸を一言で表現すれば、面白くて、わかりやすい。これは、簡単なようで、難しいこと。さらには、うまさも持っている金馬師匠の作品を一度御堪能ください。
まだ気が早い感じですが、このブログを書いているうちに、花見が待ち遠しくなってきました。私が一番好きな桜の名所は、東京武蔵野の“井の頭公園”。話は落語からそれますが、井の頭公園では最近、「在来魚の復活」と「水質改善」という2つの効果を期待して「かいぼり作業」が実施されました。
◆水抜き後の井の頭池
「かいぼり」とは、約1ヶ月の間、池の水を抜き、天日に干す作業のこと。この作業については書きたいことがいっぱいありますが、話が長くなりそうなので、今回のブログはここまで。

(よっしゃん)