じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

柴田南雄のシアター・ピースCD

作曲家・柴田南雄さんの代表作「合唱のためのシアター・ピース」の増補解説版・SHM-CD盤を発売いたしました。詳しくは当財団の作品紹介ページをご覧ください。リンク先の画面を下にスクロールしていただくと、各曲の聴きどころが45秒ずつ試聴できます。→ 「柴田南雄/合唱のためのシアター・ピース」[SHM-CD増補解説版]

また平井洋さんのサイト「Music Scene」に、制作担当の私が書いた紹介文が掲載されましたのでご案内させていただきます。

特集Scene 第122回 「CD柴田南雄/合唱のためのシアター・ピース」(2010年12月1日)


今回の増補解説版では詞章の原稿についても細かい見直しを行なっています。とりわけ横手萬歳の現地取材に基づいた『萬歳流し』(楽譜は未出版)は、もとから確定的な詞章が文献の上では存在しないこともあり、秋田県羽後町出身の作曲家・仙道作三さんや秋田県出身者の方々のご協力を得ることで、多くの疑問点を明らかにすることができました。じつは『萬歳流し』の作曲当時、仙道さんは師の柴田さんと一緒に秋田県横手への現地取材にも何度も同行し(最後はお一人でも取材に訪れています)、最終的に譜面に書く語句の確認をされたのですが、今回自筆譜上の問題点が数箇所で見つかってしまいました。たとえば、萬歳の文句に登場する「心山(しんざん)、木山(きざん)」というのは、正しくは「真山(しんざん)、本山(ほんざん)」で、確かに現地取材テープを聴くと「ほんざん」と言っています。おそらく詩句を書き写す作業の間に横棒一本を書き損ねて、いつの間にか「本」が「木」になってしまったのでしょう。もっとも本作ではこの種の異同は必ずしも作品の本質を左右する類のものではありません。しかし作曲者はこれらのシアター・ピースを練習する際に、譜面はあくまで補助的に使われるべきで、むしろ作曲者自身が取材した現地録音テープを聴いてそれを耳から覚えるのを推奨していたこともあり、今回は解説書の作成に当たって可能な範囲で詞章の校閲を行なうことにしました。

お詫びと訂正: 初版解説冊子で『萬歳流し』の歌詞の内、以下の誤植がありました。80、83ページの「来西来等【ルビ:しらりしゃらりと(ひらいしゃりとう)】」は、「来」の前に漢字一字「東」が抜けており、正しくは「東来西来等」となります。「東来」二字のフリガナが「しらり」。また83ページ上段12行目で、2つ続く漢字「御」の内ひとつをトル。「御」は正しくは一字のみです。

今年(2010年)は柴田南雄さんの仕事に再び光が当たる出来事が色々と続きました。岩波現代文庫からは名著『グスタフ・マーラー ― 現代音楽への道』と『日本の音を聴く ― 文庫オリジナル版』が相次いで刊行されました。後者『日本の音を聴く』には、合唱のためのシアター・ピースが成立した背景と各作品の内容が丁寧に記されているので、ぜひ本CD盤と一緒に手に取っていただきたいと思います。

以下のリンク先は、この二冊の内容を詳しく紹介した岩波現代文庫・編集部からのメッセージ」です。

『グスタフ・マーラー ― 現代音楽への道』
『日本の音を聴く ― 文庫オリジナル版』

『日本の音を聴く ― 文庫オリジナル版』には紙幅の都合でシアター・ピース作品の歌詞が掲載されていませんが、これらはすべて柴田南雄さんの公式ホームページからPDFファイルで自由に閲覧・ダウンロードが可能です。(

そしてフォンテックからは音と映像による柴田南雄作品集の刊行が始まりました。『柴田南雄とその時代 第一期』(CD4枚&DVD2枚)に関しては、ウェブサイト「Music Scene」のなかに、この作品集の解説書の編集を担当された小野光子さんが執筆した記事が2つあるのでご紹介します。

「柴田南雄とその時代 第1期」完成!小野光子
『柴田南雄とその時代第1期』発売! シアター・ピースのことなど小野光子

このシリーズは来年(2011年)秋に「第二期」の発売が予定されています。

また当財団から発売しているCD『無限曠野/銀河街道――柴田南雄後期作品集』の Disc 2 に収録された「銀河街道 La Vía Láctea」(no.113, 1993)も、児童合唱・女声合唱のためのシアター・ピース作品です。カリスティヌス写本、スペイン中世の聖歌やわらべうたを題材にした、天上的な美しさに溢れた歌声が響きわたります。(HMVのサイトで、全トラックの一部が試聴できます。

(堀内)